「リュカ」「エル・ケル・グランバニア」に著作権!? 久美沙織先生の小説と映画ドラゴンクエストⅤ

新宿・青梅・三郷の弁護士法人アズバーズ代表、マンガ・ゲームも好きな弁護士の櫻井俊宏です。
中央大学では、法務全般を担当する「法実務カウンセル」として、論文の著作権等、著作権の法律問題も良くてがけております。

ドラゴンクエスト、いわゆる「ドラクエ」は、1~9まではやりました。
そのうち、1~5ぐらいは、世代真っ只中なので、かなり繰り返しやり、周辺作品も抑えました。やっぱりⅢが一番印象に残っているかな。

この中で、当時見た久美沙織先生の小説の中で、「ドラゴンクエストⅤ」のキャラクター「リュカ」の名前を、ドラゴンクエストⅤの映画が利用したとのことで、久美沙織先生がスクエア・エニックス社、東宝を相手に、著作権侵害による訴訟を提起したようです。

ドラクエ主人公「リュカ」の名は誰のもの?小説家がスクエニ、東宝などに賠償求め提訴
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5fbef80cc5b6e4b1ea4870dd


キャラクターの名前に著作権は成立するか、
本件の経緯と内容、
本件の争いの実態、


等について、法律上の問題点について解説します。

 

1 キャラクターの名前に著作権は成立するか

以前の記事でお話したように、キャラクター自体には著作権は成立しません(ポパイ事件)。
呪術廻戦の芸術的オマージュ【弁護士が著作権を解説】

キャラクターの絵について、絵画の著作権が成立するのみであり、キャラクター性には著作権が成立しないということです。
キャラクターの性格が似ていても、絵が違う場合には著作権侵害はないということになります。

では、キャラクターの名前に著作権は成立するでしょうか。

例えば、名前という意味では、小説の題名や歌の題名には、裁判例上、著作権は成立しないようです。
著作権が成立しないような長さであるのがその理由です。
【参考】瑛人の「香水」は商標権侵害とならないか

短い言葉に対する著作権という意味では、
・俳句も高度なものだと著作権が成立するような場合もあるそうです。
・交通標語「ママの胸よりチャイルドシート」が「ボク安心 ママの膝(ひざ)より チャイルドシート」という標語の著作権を侵害しているとはいえないと判断されました。
・裁判例上の「ラストメッセージin最終号事件」では、
「あたたかいご声援をありがとう 昨今の日本経済の下で〇〇は,新しい編集コンセプトで再出発を余儀なくされました。皆様のアンケートでも新しいコンセプトの商品情報誌をというご意見をたくさんいただいております。〇〇が再び店頭に並ぶことをご期待いただき,今号が最終号になります。長い間のご愛読,ありがとうございました。」
という部分について著作権が成立していると判断されています。

いずれにしろ、キャラクターの名前も短いので、著作権が成立しないことになります。

 

2 本件の経緯と内容

本件では、ドラゴンクエストⅤの映画は、主人公キャラクターとして「リュカ・エル・ケル・グランバニア」通称「リュカ」としたそうです。

これに対して、久美沙織先生のドラゴンクエストⅤは、「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」で「リュカ」としていました。

言うまでもなく、真似であることは間違いありません。

しかし、名前単独だと、短いので、著作権と言うには難しいでしょう。

特に「リュカ」だけでは当然認められません。

「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」は、少し長く個性的ではあります。
「リュカ・エル・ケル・グランバニア」に変更したのは、著作権の中でもアレンジを加える「翻案権」(著作権法27条)、もしくは著作者の変えてほしくないという気持ちを保護する著作者人格権の同一性保持権(著作権法21条)違反が問題となるでしょうか。

しかし、これ単独では、侵害とするのはやはり難しいでしょう。

久美先生は、
「繊細で優しいけれども勇敢な大人に成長していく主人公にふさわしい名前を考えた。響きや字面なども意識した。」
とおっしゃっているようですが、そこまで考慮してもらう、または小説ドラゴンクエストⅤの作品全体の意味合いが「リュカ」の中に込められており、作品全体も合わせて著作権侵害が成立する、というような判決にならない限りは、著作権侵害となることは難しいように思います。

3 まとめ 本件の争いの実態

久美先生は、自分の名前を映画の最後に出してほしいと言っていただけと聞いています。
素晴らしい作品だったのでしょうし、それぐらいはしてあげれば良かったのにな、と思います。
こじれて訴訟にまでなってしまいました。

どうも、テルマエ・ロマエについて作者に100万円しか支払われていない件といい、映画化における原作者への経緯が欠けている風潮が見られるように思います。

私は、確か小説ドラゴンクエストⅣを読んだと思います。
それも良かったのですが、オリジナリティが強い「精霊ルビス伝説」が特に面白かったです!!

幻冬舎ゴールドオンライン 弁護士櫻井俊宏の身近な法律トラブル防止に関する連載 全13回